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◆禁煙のススメ◆ 2009/2 中瀬 勝則
「吸いたい、やめたいという気持ちの綱引きがあり、人によっては妻よりも長く付き合っている。簡単には別れられない」
◆徳島市内の自らの診療所で禁煙外来を設けているほか、県医師会の研究会やNPO法人でも、禁煙支援に取り組んでいる。医者になった当初は一日30本を吸うヘビースモーカー。我慢するだけの「修行僧型」禁煙に挑んだこともあったが、長続きしなかった。それが8年前、ニコチンパッチを使って禁煙に挑んだ時は、吸わない時期が8カ月続いた。東京での学会の後、飲み会で同級生に勧められて1本だけ吸ったが、まずい。「もう関係ない世界だ」ところが翌日、同じように友人に勧められてたばこを口にすると、吸った瞬間に体が浮くような感覚がよみがえった。「たまに一本吸うのはいいだろう」。徳島に帰ると、1週間後には元の喫煙量に戻ってしまった。
◆今に続く禁煙ができたのは、その半年後。診察室では吸えないため、建物の3階まで上がって喫煙するのが煩わしくなった。
◆「吸わないときは楽だった」。16回目の禁煙チャレンジだった。
◆「たばこをやめてイライラすることが減り、体調も良くなった。喫煙は習慣・嗜好(しこう)ではなく、ニコチン依存症という脳の病気。病気である以上、治療法があります」ニコチンが脳に働きかけると、ドーパミンという快楽物質が出る。たばこを吸うと、ほっとするように感じるのは、ニコチンが切れてきたのが元に戻るだけだ。逆においしいものを食べても、ニコチンを補給しないと満足感が得られなくなってしまう。
◆治療では主に飲み薬を使って禁断症状を緩和し、徐々に吸いたい気持ちを少なくしていく。禁煙外来は06年から保険診療の対象にもなり、以前より禁煙しやすい状況は整っているという。「禁煙しようと思ったら、最初にたばこ、ライター、灰皿をすべて捨ててください。自分で環境をつくれる人はやめられる。失敗することが恥ずかしいのではなく、チャレンジしない方が恥ずかしい時代です。失敗しても大丈夫。何度でもやり直せばいいんですよ。私自身も薬の力を借りながら、禁煙できるまで3年かかりましたからね。」